定住人口増加グループ

「定住促進に向けた取組みについて:効果的な取組みとは?キーワードを探る」

定住人口増加G

○はじめに
平成20年を境に、日本の総人口は減少局面を迎えました。特に地方においては、人口減少のもたらす影響は大きく、地域経済やコミュニティをどのように維持していくか、持続的な自治体経営が問われています。

こうした中、各自治体では、定住人口の増加に向けた取り組みを推進しており、地域の特性に応じた定住施策を展開している所です。

しかし、定住人口増加に向けた取り組みは、明確なビジョンが無ければ、単なる人の取り合いに終始してしまう可能性があります。
そのため、定住人口増加グループでは、効果的な定住施策の立案に向け、新たな発想のヒントを探るべく、各自治体で取り組まれている定住施策について調査を行うことといたしました。

○山梨県北杜市の取り組み
北杜市では一昨年の平成25年に、定住促進計画の策定をいたしました。

計画策定にあたり、市民目線での状況把握をめざし、住民の意識調査や企業ヒアリングを実施しております。調査からは、市の強みとして、地域住民の優しさや食育に適した環境であることが明らかとなりました。一方、弱みとしては、小児科等、病院が遠く不便であることが挙げられました。

この調査結果を基に、市では「子育て・教育」「産業振興・雇用」「交流・観光」「住宅」「生活環境」の分野での5つの施策と、「情報発信」と「連携」という2つの共通施策に取り組んでいます。

「子育て・教育」では、第2子以降の保育料無料化の維持に加え、学童保育の対象を小学校3年生から6年生に拡大したほか、学校給食に地域の食材を優先的に使用しての食育の推進を行っております。

「産業振興・雇用」では、市の特徴を活かしました農業生産法人等の誘致、新規就農者への開業、販路支援等を掲げております。「交流・観光」では、自然や農業等を体験できるツアーを企画。移住者や地域住民との交流、情報交換の場をつくりました。

また「住宅」施策では、子育て住宅を整備するほか、住宅取得者や空き家改修への助成金を設けました。「生活環境」では、安心して外出が出来る地域公共交通体系の検討に加え、産婦人科、小児科診療所の開業支援を行っております。

共通施策では「情報発信」として定住に向けたワンストップ相談窓口を設置、「連携」として定住実現構想の取り組みを行っています。

迅速な取り組みを心がけ、出来る所からということで、現在、医療費の窓口無料化の拡大、住宅施策の助成、定住実現などについて先行的に実施しております。
また北杜市では現在、産官学金労言で構成いたします「ふるさと創生会議」の御意見を伺いながら、総合戦略の策定に取り組んでいます。市民にとって住み続けたいまち、市外に居住されている方にとって住んでみたいまちと感じて頂けるまちづくりを進めております。

○奥多摩町少子化対策・定住化対策計画
続きまして、奥多摩町少子化対策・定住化対策計画についてご説明いたします。

奥多摩町では急速な人口減少と少子高齢化が進行する中、この問題を早急に解決する為、少子化対策、定住化対策計画を策定しております。その中で特にユニークな新たな取り組みとして、「いなか暮らし支援住宅」をご紹介したいと思います。

奥多摩町では、若者定住化対策事業の一つとして、管理が出来ない等の理由により町に寄贈された空き家を、一定の条件の下、希望者に無償で譲与するという取り組みを行っています。

応募条件は、40歳以下の夫婦であるか、あるいは50歳以下で子ども(18歳以下)のいる家庭で田舎暮らしを希望していることです。

応募頂いた方の中から、夫婦の年齢や子どもの人数、子どもの年齢をポイント化し、得点上位の方とヒアリングを実施した上で入居者を決定いたします。入居者が奥多摩町に15年以上定住した時点で土地建物を譲与するという仕組みです。

建物は現状での引き渡しになりますので、リフォームに係る費用は入居者の負担となりますが、町の方でリフォームに係る費用を200万円まで助成しております。

第一回目の募集では250件の問い合わせがあり、24件の本申込みがありました。

今後も増加すると考えられる空き家を活用する為に、ゴミ処理費等を含めた新たな交付金の制度を作り、職員が地域の定住サポートを行う奥多摩町定住サポーター制度を創設する等の取り組みを進めております。

奥多摩町では、このように定住対策を進めながら、地域の元気づくりに繋がる様々な取り組みを実施し、住民が幸せに暮らせるまちづくりを行っております。

○終わりに
以上、北杜市と奥多摩町の事例を紹介いたしましたが、定住施策の取り組みにはこの施策を打ったら必ず人口が増えるという魔法のようなものはございません。単発の施策に留まることなく、明確なビジョンの下、中長期的な展望をもって総合的・体系的に施策を実施していくことが重要です。

各自治体の地域性や強み、弱みを踏まえる一方で、各自治体に共通する取り組みとして情報発信、郷土愛、少子化対策を総合的に進めていくことが求められます。

地域の資源・魅力を掘り起し、街の認知度を高めるシティーセールスの推進や、地域住民の当事者意識を高めるシビックプライドの醸成、人口の自然増へ向けた地道な施策の積み重ねが必要です。

持続的で自立したまちづくりを進めることこそ、地域に暮らす人々の幸せにつながるものであると考えます。

実務者会議の各グループの発表内容は参加自治体の公式見解を表すものではありません。

最終更新日:平成28年2月15日