○はじめに
グループ④では、幸福度指標をどうしたら総合戦略に活用できるのだろうかというところから議論を始めました。当初、幸福度指標を総合戦略の策定に活用したり、今後、PDCAサイクルで総合戦略の見直しをする際に活用したりすることを検討しましたが、グループ内のほとんどの自治体は平成27年10月までに総合戦略の策定を終えておりました。また、総合戦略と幸福度指標の関連を見ると、幸福度指標に類似した指標(例えば、子育て世代の満足度)を設定している自治体はありましたが、実際に幸福度指標を設定している自治体は数少ない状況でした。
このような状況を踏まえて、幸福度指標と地方版総合戦略とをどのように結びつけるかについて、グループ内で相当時間をかけて議論をしました。
○指標の抽出
幸福度指標は、健康や生活のゆとりなどの、個人の実感を測定するものが多いのですが、KPI(Key Performance Indicator)は事業の成果、達成度を測定する客観的なものです。私たちのグループでは、KPIを地域の幸福度を測るための指標ととらえました。
既に策定された各自治体の総合戦略を見ると、若い世代に定住してもらうことが重要と考えている自治体が多く、今後、出身者のUターン施策に積極的に取り組んでいく傾向が見られました。若い世代の定住や、出身者のUターンにつなげるには、子どもの頃から地域に愛着を持ってもらい、進学や就職などでいったん転出しても再びふるさとに戻りたいと思う郷土愛を醸成することが必要であると考えました。そして地域の良さを実感するためにも様々な交流機会を創出することが重要であると考えました。そこでKPIに関しても、「地域への愛着の醸成」と「交流機会の拡大」を測定できるものにしようということになりました。
○指標の活用
指標の活用にあたっては、様々な意見が出ました。例えば、「毎年度の進捗度合が見えるようなものが良いだろう」や「自治体の強い部分あるいは弱い部分がわかるものが良いのではないか」といった意見です。また、皆さん、自治体の職員だからでしょうか、「他の自治体との比較ができる指標は参考になるのではないか」という意見がありました。また、「住民にとってわかりやすいものが良いだろう」という意見もありました。これらの意見を集約し、次の頁の図に示すようなレーダーチャートを作りました。
先ほど申し上げましたように、地方創生を定住化の観点から実現させるために「地域への愛着の醸成」と「交流機会の拡大」の2つのレーダーチャートを作成しました。なお、「地域への愛着の醸成」は住民向けの内向きの指標として、「交流機会の拡大」は住民以外向けの外向けの指標として位置付けました。
チャートでは、目標の達成率を1から5までの数字で評価します。3が標準です。大分類については総合戦略のキーワードであります「まち」「ひと」「仕事」で区分しました。小分類については各自治体の総合戦略で掲げている指標に基づいて設定をしました。具体的な評価内容となるKPIについては内閣府が地方創生に関わる特徴的な取り組み事例を取りまとめておりまして、それに基づいて設定しました。各自治体で規模や実態が異なりますので、小分類は共通項目としておりますが、KPIについては各自治体で項目を設定するのが妥当であると考えました。
○おわりに
最後に感想を述べますと、新たな取り組みである総合戦略への幸福度指標の活用を考えるのはたいへん難しかったです。議論を重ねる中で、「地域への愛着の醸成」と「交流機会の拡大」に焦点を絞り、KPIのチャート案を作成できたことは一定の成果であるとグループ内で評価しています。しかし、多くの課題も残っていると反省もします。例えば、小分類とKPI項目の整理については、議論が足りなかったと思います。特に自治体間比較に関しては、今回提案した指標で可能なのかは実際に検証してみないとわからないと思います。私たちのグループの研究はここまでですが、全国の自治体が取り組んでいる地方版総合戦略において、幸福度指標を活用するには、ローカルレベルの研究が必要ではないかと考えております。ご清聴ありがとうございました。
実務者会議の各グループの発表内容は参加自治体の公式見解を表すものではありません。
最終更新日:平成29年10月13日