幸福度等意識調査の政策への反映

○はじめに
 グループ①では、各自治体が実施する幸福度等意識調査をどのように政策に反映させているのか、その手法や仕組みを検証しました。なお、対象とする意識調査は幸福度に限定せず、広く捉えました。また、政策に反映する手法を検討する際は、自治体や地域によって抱える課題が多様化していることに留意しました。

○幸福度等調査の分析から見えたこと
 幸福度等調査を分析してわかったことは2つあります。一つ目は、幸福度、満足度と健康、つながりの関係性が強いことです。例えば、「住みやすさ指標」を掲げている滋賀県守山市が行った調査を例に見ます。調査では、住み心地や幸福実感の他、健康、つながりなど8つの分野についてそれぞれ5個の評価項目を設定し(計40項目)、回答してもらいました。幸福実感と40の評価項目の相関関係について、相関係数の高い順に並べたところ、上位20位までに健康分野の4項目、つながり分野の全5項目が入っておりました。他の区市町が行った調査についても、同様の傾向が見てとれました。

 また、グループ①のほとんどの自治体で、健康を増進させながら人とのつながりを作る取り組み、例えば、介護予防の運動などに取り組んでいることがわかりました。

○幸福実感を向上させる施策
 健康実感の向上を通じて幸福実感を向上させる施策の事例をご紹介します。静岡県三島市では、「スマートウェルネスみしま~『健幸都市』づくり~」を標語に、様々な事業を行っており、その一つとして、公民連携で健康づくりに取り組んでいます。具体的には、株式会社タニタと協働しまして、平成27年に「みしまタニタ健康くらぶ」を立ち上げました。クラブの会員は、1日に歩いた歩数や総消費カロリーを表示する活動量計を持っています。健康情報発信拠点である計測スポットやタニタカフェが監修したメニューを提供する店に置かれている体組成計で体の状態を計測し、パソコンやスマートフォンで体の変化をチェックすることができます。毎年行う市民意識調査でも、10点を満点とした幸福感の平均点が平成24年度調査では6.66であったのに対し、平成28年度調査では6.80となり、0.14ポイント上昇しました。

○地域特性にあった政策・施策を反映
 幸福度等調査を分析してわかったことの二つ目は、地域それぞれの特性があり、幸福度等の意識調査は、その地域が抱える課題を発見するツールとして活用することができるということです。事例をいくつかご紹介します。

 例えば、茨城県つくば市は、合併前の6つの町村地区、つくば研究学園都市の誕生によって整備された地区、つくばエクスプレス沿線地区があり、地区それぞれに特徴と課題があることが調査によってわかりました。各地域に寄り添いながら市政を行うため、平成29年度から、各地区に相談センターを設置し、要望への対応を行っています。また、周辺市街地振興室や学園地区市街地振興室を設置し、旧市街地の再生や中心市街地の活性化などを行っています。

 また、東京都荒川区では、荒川区民総幸福度のアンケートをもとに、防災性の実感が低い人の属性を詳細に分析した結果、若い人や一人暮らしの人の実感が低いことを発見しました。それを受け老若男女が楽しみながら防災訓練を行える防災イベント「あらBOSAI」を開催し、防災に関する意識の向上や人とのつながりを醸成しています。

 最後に、徳島県阿南市では、健康・福祉分野とともに、幸せにとって重要なことの順位づけでポイントが高かった安全・安心分野に関して、大阪大学大学院工学研究科と連携して小学生を対象とした防災プレミアム講座等の取り組みを行っております。これは、近い将来において発生が危惧される南海トラフ巨大地震等に備えるためであり、普段から人と人とのつながりが重要であるという意識を醸成する目的もあります。

 このように幸福度等調査は、地域課題の発見ツールとして活かすことができます。発見した地域課題を改善していくことによって、住民の不安や不幸を減らし、幸福実感の向上へとつながる好循環を作り出していくことができると考えます。

○おわりに
私たち基礎自治体職員の最大のミッションは、地域住民の幸福感の最大化です。幸福度調査の政策への活用の意義として、「地域課題を明らかにするツール」「基礎自治体職員の意識改革」「自らの幸せとは何かを考えるきっかけ」「事務事業のスクラップ&ビルド」があると考えられます。

 幸福度等調査は、「ビルド&ビルドからスクラップ&ビルドへ」にも活用できます。つまり、幸福度等調査には、幸福実感向上につながる関連指標を向上させる取り組みや政策を立案したり実行したりする時だけでなく、総合計画や行政評価の重要業績の指標として、取り組みや政策を評価したり改善したり廃止したりする時にも活用できます。このようにPDCAサイクルの確立が大切です。

 また、幸福度等調査の実施について、今後の課題としましては、「サイレント・マジョリティ」、無関心層の存在です。各市町が行った調査では約5 割の方が未回答でした。特に、若い世代の回答率の低さが問題になっています。こうした課題への対応として、スマートフォンやパソコンによる回答の導入など回答方法を工夫する必要があります。

 また、アンケート調査を実施するだけでなく、我々公務員が積極的に地域活動、社会貢献活動に参加し、地域住民の考え・意見を傾聴することが求められていると思います。

 最後に首長の皆様にお願いです。スクラップは何倍もの労力が必要です。スクラップを実行した職員の評価をぜひお願いしたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

実務者会議の各グループの発表内容は参加自治体の公式見解を表すものではありません。

最終更新日:平成29年10月13日