地域間連携の在り方や実践

○はじめに
 グループ⑤では、ふるさと納税と地域おこし協力隊による地域間連携の在り方について考えました。私たちは、他の市町村を出し抜くとかそういった観点ではなく、腹を割って地域間連携について議論しました。

 

○ふるさと納税の返礼品
 ふるさと納税につきましては、寄付金額、寄付件数ともに毎年、強烈な右肩上がりで、27年度については1,653億円に達しております。一方、問題も多くなってきまして、皆様ご承知のとおり、平成29年4月1日付で総務省から、返礼率は3割までに抑えるようにという通知が出ました。通知に強制力はありませんが、各自治体で様々な検討を始めております。また、東京都を始めとする大都市部での税収の減少、返礼品の競争の過熱化などがおきています。

 ふるさと納税の返礼品に関しては、私たちのグループ内でも、交流都市である、千葉県いすみ市と群馬県長野原町が連携をしております。また、そば打ち、釣り、筆づくりなど体験型の返礼品を用意する市町村もあり、様々な取り組みがされております。

 同時に課題もあります。例えば、インターネットを使ったポータルサイトの普及によって、寄付件数、金額ともに膨大な数に膨れあがったことによって、様々な問題が発生しております。具体的には、ワンストップ特例申請書の処理など事務量の増加、また昨年度から始まったマイナンバーの記載とそれに伴う事務の煩雑化です。こうした課題については多くの自治体で共通するものでした。

 これらの現状分析や課題抽出を受けて、ふるさと納税のそもそもの趣旨を考え直しました。私たちは、ふるさと納税は、自分たちのまちの応援者をつくる取り組みと考えます。返礼品自体は確かにモノではありますが、モノの背景にある「まち」や「ひと」が伝わるストーリー性のあるPRが重要ではないでしょうか。例えば、連携の一例として、下図のように幸せリーグ加入自治体の紹介パンフレットを作成して、そこに一自治体一品程度ですが、それぞれの自治体の歴史や伝統、風土などが伝わる返礼品を紹介してはどうかと考えました。

H29グループ⑤_2

 また、幸せリーグでふるさと納税サイトを立ち上げ、リーグ加入自治体がまちの取り組みを紹介したり、現在、総務省でも進めているクラウドファンディングを活用して、自治体が実施する事業の応援をしてもらうなど、返礼品をもらうだけではない、応援したい自治体の力になれるような「入り口」を多く設けてみてはどうか、という意見も出ました。

○地域おこし協力隊制度
 地域おこし協力隊制度についても、地域間の連携ができないか、議論いたしました。こちらの制度も、毎年隊員数や受け入れ自治体数が右肩上がりで増えています。

 しかし、拡大の一方で「田舎の不便さには耐えられない」「田舎独特の習慣についていけない」「地域にとけこめない」といった理由から、赴任当初、志を持って来られた方がほとんどかと思いますが、早期に辞めてしまう隊員もおります。

 そうした状況を踏まえ、私たちのグループでは、グループ構成自治体の地域おこし協力隊員の本音を聞くべく、匿名のアンケートを実施し13自治体の61名から回答を得ました。例えば、隊員に応募した理由については「自分の能力、経験を活かせると思ったから(14.6%)」「地域の活性化に役に立ちたかったから(13.7%)」「活動内容がおもしろそうだったから(13.3%)」と、どれも同じくらいの割合でした。また、隊員としてどのような活動に取り組んでいるかについては「地域行事やイベント等コミュニティ活動の応援」が最も多く21.0%、次いで「地域メディア、インターネットなどを使った情報発信」が16.2%、「地域ブランドや地場商品の開発・販売・プロモーション」が12.2%でした。以上から、地域おこし協力隊員は、積極的・自発的に活動して、地域おこしに直結するような取り組みに従事している様子が窺えます。

 また、地域おこし協力隊員は、自治体の内外を問わず、協力隊員同士の横のつながりが強く、ブログやSNS を通じて、様々な自治体にいる隊員同士で情報共有を図っています。

 一方、協力隊員制度を担当する自治体職員同士の連携は、果たして十分でしょうか。隊員のニーズを一つの起点として、担当職員同士の学び合いの場が必要ではないか、という点が議論の俎上に上りました。協力隊員は、経験を積むごとに年々必要な対応が異なっていきます。担当職員はそのことを理解すべきであり、そのためにも他自治体の事例を学ぶ、横の連携が必要不可欠だと考えました。

 最後に国への要望です。協力隊制度の財源は100%特別交付税措置であり、交付税が無くなるか減るかすれば、協力隊が存在しなくなる可能性が高いと思われます。地域おこし協力隊員は、その地域を熟知している人とは限りません。別の都市で生活していたからこそ、見える視点があると思います。制度をより良く修正しながら、メリットである若者の定住や町村おこしの大きな戦力として協力隊制度が今後も継続・拡大することを要望していきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

実務者会議の各グループの発表内容は参加自治体の公式見解を表すものではありません。

最終更新日:平成29年10月13日