子育て支援

○はじめに
 グループ④では、子育て支援施策の今後の在り方を検討することを目的として、まずは子育て支援施策についてどのような課題認識のもと、どのような施策が展開されているのか、グループ参加自治体間で情報共有をしました。その上で、共有した情報をもとに、幸せリーグ加入自治体を対象にアンケート調査を実施し、子育て支援施策の全体的な傾向を把握するとともに、特徴的な施策の抽出を試みました。

○先進事例(東京都奥多摩町)
 アンケート調査は、「地域特性にちなんだ独自の子育て支援施策に関する調査」と題して、独自施策のほか、子ども・子育て支援法第59条に基づく地域子ども・子育て支援事業(13事業)、比較的多くの自治体で実施されていると思われるその他の子育て支援事業(10事業)、計23事業の実施状況について調査しました。なお、アンケート調査には64自治体から回答をいただきました。
 初めに、下のスライドが地域子ども・子育て支援事業の実施状況に関する集計結果です。回答自治体のほぼ全てが「妊婦健康診査」「乳児家庭全戸訪問事業」「放課後児童健全育成事業」を実施していることがわかります。一方、「多様な事業者の参入促進・能力活用事業」を実施している自治体は少数です。

 次に、その他の子育て支援事業の実施状況の集計結果が下のスライドです。「ひとり親家庭等の子どもへの医療費支援」「不妊治療費助成」を実施している自治体は85%を超えています。上位3事業は全て経済的支援の取り組みであり、多くの自治体で子育て世帯への経済的支援を実施していることが分かります。

 続いて、各自治体の人口と実施施策数をプロットし、相関関係を調べてみました。様々な要素が絡むため一概にはいえませんが、相関関係の説明率を表す決定係数(R2 乗値)が0.2665 となっており、人口と実施施策数には正の相関があるように見受けられます。

 同様に、実施施策数と年少人口比率の関係についても調べましたが、ほとんど相関がありませんでした。取り組みの数を単純に増やすだけでは年少人口比率の増加に結びつかないことがうかがえます。
 また、各自治体には独自の子育て支援施策も挙げてもらい、経済的支援かどうかという視点で分類してみました。その結果、経済的支援施策が約半数を占めており、現状では「保育料無償化」「医療費助成」といった経済的支援施策が重視されている傾向にあります。

○今後の子育て支援施策の在り方
 経済的支援施策は即効性があったり、成果が見えやすかったりするため、多くの自治体で実施されています。しかし、今後人口減少が進み、自治体の財政状況が逼迫し、少子化の出口が見えない中で、長期間継続していけるのかという問題に突き当たります。本グループでは、今後は目先の事業効果を追いかけるのではなく、長期的な視点を持ち、精神的な安らぎをもたらす施策、幸福感を向上させる施策を実施すべきだという結論に至りました。こうした方針転換が、持続可能な自治体運営につながるのではないでしょうか。
 そこで、今後の子育て支援施策の在り方として、3点を提言させていただきます。
 提言1は「子育て世代の交流」です。これは親子での交流の場を提供することで、子どもの社会性を育み、成長を実感する場として、そして、親同士がつながる場、気分転換の場としても活用してもらうことです。
 提言2は「仕事と子育ての両立」であり、働き方改革ともいわれていますが、家族が一緒に過ごす時間をできるだけ多く確保することです。
 提言3は「子どもの健幸づくり」であり、子どもが健康であることです。
 これらのベースにあるのは、本当の幸せや豊かさ、満足感、充実感は人とのつながりや家族との時間を持つこと、いざというときに頼りになる存在がいること、そして、何よりも健康であること、つまり精神的な安らぎと幸福感の向上、ここに集約されるのではないかということです。
 また、それぞれの提言に沿った事例として、千葉県館山市の「館山市元気な広場」(提言1)、北海道斜里町の「斜里町児童館あそぼっくる」(提言2)、茨城県龍ケ崎市の「小児生活習慣病予防【ヘルシースクール】」(提言3)を紹介したいところではありますが、お時間の関係上、詳細は省略させていただきます。


●講評
 このグループは、アンケート調査によりデータを集めて分析をしていますが、あまり相関がないという結果も出ています。これはなぜかというと、施策の数だけを調べたからだと思います。施策の種類がたくさんあれば効き目があるわけではないと思いますし、もともと子どもが多い自治体はそれだけ施策も多い可能性があります。そういう点から言うと、効き目としては基本的に出生率などを見ることになりますが、時系列的な変化も併せて見る必要があります。経済的施策の効果がこのくらいで、これだけではだめなので新たな視点を検討するという流れができますと、より説得力が増します。
 しかし、経済的な支援は持続可能性に不安があるため、他の視点を検討し、3つの提言をされたのは大変良いことです。そこからさらに調べるとするならば、提言に沿った事例を紹介していただいていますが、同じような施策を調べ、比較をしてみるとよいと思います。比較をしてみて、それぞれの施策の良し悪しや改善点、場所や人が足りない場合はどのような工夫ができるかということを議論すると、より具体的な提言を考えることができます。

実務者会議の各グループの発表内容は参加自治体の公式見解を表すものではありません。

最終更新日:令和2年3月6日