地方創生・公共施設の総合的管理

○はじめに
 公共施設の老朽化が年々進んでおり、維持や修繕にかかる費用が財政を逼迫させる大きな要因となっています。そこで、グループ⑥では地方創生を起爆剤として、リノベーションをはじめ、そのほか公共施設の今後の在り方を研究することを目的としました。
 参加自治体間で公共施設の現状や課題、活用している地方創生交付金の情報交換等を行い、さらに幸せリーグ加入自治体にアンケート調査を行いました。将来的に施設を減らしていく、または現状維持を目指す必要がある自治体などを想定し、公共施設を活用した地方創生、または公共施設に付加価値をつけていくにはどうしたらよいか等を議論しました。

○地方創生及び公共施設管理についての国の動向
 地方創生に係る国の中長期ビジョンでは、人口減少問題の克服や成長力の確保のため、各種補助金、まち・ひと・しごと創生事業費による地方財政措置の充実、地方住民生活等緊急支援のための交付金等の財政措置が講じられています。また、平成28年度以降は、地方の取り組みに対する更なる支援として、新型交付金などが創設されました。
 公共施設の総合的管理については、平成25年11月にインフラ長寿命化基本計画が国において策定されました。市区町村においては、平成26年4月に総務省から公共施設等総合管理計画を策定することが要請されています。公共施設等の全体把握を行い、長期的な視点で更新・統廃合・長寿命化などを行うことにより、財政負担を軽減し、平準化するとともに、公共施設等の最適な配置を実現することが必要であるとされました。

○参加自治体のグループ分け
 公共施設の現状について話し合った結果、概ね以下の3つに分類できました。なお、Aのフルセット主義とは、文化・教育・福祉など公共サービス提供のための施設等をすべて自らが整備し、保有しようとする考え方です。

○各自治体の公共施設の管理状況
 テーマに関する情報を幅広く各自治体から収集するため、幸せリーグ加入自治体を対象にアンケート調査を実施し、79自治体から回答をいただきました。
 まず、公共施設について、平成の大合併により合併した33自治体を対象に「自治体規模に見合わない公共施設数があるか」と尋ねたところ、約64%が「ある」、約36%が「ない」と回答しています。「ある」と回答した自治体は、合併前の市町村に体育館や図書館などがそれぞれあって、合併後もそれらが存続しているため、類似施設があるということです。「ない」と回答した自治体は、もともと公共施設が広域で1つしかないので、課題とはなっていないようです。
 「公共施設の維持修繕等の費用が課題となっているか」という質問に対しては、94%の自治体が「課題である」と回答しており、高度経済成長期に建設した大量の公共施設が、今後一斉に更新時期を迎えるという状況です。一方で、「課題ではない」という自治体は、人口が微増傾向にあり、公共施設等総合管理計画の期間中は現在と同規模の歳入が見込めるので、維持修繕に係る経費を賄えると考えているとのことです。
 続いて、約4割の自治体が、「施設の複合化に伴い公共施設を建設した」と回答しています。施設の老朽化が進んでいた行政系施設と生涯学習施設について、行政サービスの提供、生涯学習活動の充実、地域防災活動の拠点等の複合機能を付与した施設として再整備したという例がありました。
 このほか、地方創生拠点整備交付金については約4割が活用しており、地方創生の観点から、観光客のすそ野を広げるような施設の整備が多く見られました。中には廃校や老朽化した公民館などに地方創生の役割を付与して、再整備をしているケースも見受けられました。しかし、施設整備完了までを視野に入れた交付申請であるため、スケジュールがタイトであり、なかなか活用が難しく、使い勝手がよくないという意見もありました。
 また、公共施設の整備・運営にPPP・PFIを活用している自治体は約35%でした。

○まとめ
 公共施設等総合管理計画の財政措置としては、個別施設計画に位置づけられた事業に対して事業債が充当可能となっており、財政規模に応じて30~50%の交付税措置がされます。また、地方創生では、地方創生推進交付金が2分の1交付され、地方の負担には地方財政措置が講じられます。
 公共施設の総合的管理について、施設の縮減といったマイナスの考え方ではなく、地方創生の「人が来たくなる」「興味が湧く」「リピー
ターが増加する」といったプラスの考え方にうまく結びつけていくことが必要であると考えます。いくつかの自治体の成功例のように、各自治体において知恵を絞るのは大変ですが、財政措置やアイディアをうまく組み合わせて、公共施設を活用して地域の活性化を図っていくことが求められます。


●講評
 公共施設について、自分の自治体だけで考えていると、数が少ないため具体的になり過ぎて、なかなか知恵が出てきません。そこで、他の自治体と比べてみると、例えばある自治体では場所が足りないとか、自治体ごとに全く違う悩みがあったり、逆にこういう小さい施設はこうつくったらいいというヒントがあったり、勉強できることが多くあります。
 このグループでは公共施設ということで、いわゆる箱物が中心でしたが、インフラを考えると、道路や上下水道などは別の課題があって、実はこちらの方が費用が掛かっています。そう考えると、インフラも含めて全体で公共施設の管理計画を立てる必要があります。
 また、公共施設にはそれぞれ目的があります。もちろん必要な施設もたくさんありますが、その施設がないと実現できない目的かどうかを踏み込んで考え、整理してみると、施設を集約できたりするだろうと思います。補助金については、そのように何がしたいかを整理してから、目的に合わせて活用したほうが良いです。合併をするからということで合併特例債を活用して施設をつくり、今になって苦しんでいる例があるように、補助金があるから仕事をしているということがよく見受けられます。そういう意味では、補助金を活用していない自治体が半分以上あるということでしたが、それもよい判断だと思います。本当に必要な補助金を選べるようになるためには、このグループが研究してきた内容が大
変参考になると思います。

実務者会議の各グループの発表内容は参加自治体の公式見解を表すものではありません。

最終更新日:令和2年3月6日