幸福度調査2グループ

「幸福度調査ハンドブック(2015版)」

幸福度調査2G

○はじめに
幸福度調査②グループでは、質の高い地域づくりや、地域の住民の皆様の豊かさの向上に資することを目指して、幸福度調査のためのハンドブックを作成することに取り組みました。

幸せリーグに参加している自治体でも、幸福度調査を実施した経験のある自治体、無い自治体と置かれた状況が様々ですので、まずは調査を実施する契機となる、そのようなハンドブックを作成することを試みております。

○何故、幸福度なのか
では何故、今、幸福度が問題とされているのでしょうか。背景には、成熟した国や社会においては、経済的な豊かさを表すGDPのモノサシが、心の豊かさを表す幸福感に、結びついていないのではないかという共通認識があります。

「経済成長のジレンマ」あるいは「幸福のパラドックス」が世界的課題となる中、「量」の拡大を重視する政策から、生活の「質」の向上を図る政策への転換が求められているのではないでしょうか。

生活の「質」を高めていくためには、限られた財源を選択と集中の観点から有効に施策へと展開することが求められます。施策等の展開と併せて、幸福度指標を用いることにより、施策と住民の幸福実感との関係整理を行い、効果的な施策展開に結びつけられるのではないかと考えています。

○幸福度調査の構成について
既存の幸福度調査の内容を分類しますと、 幸福度調査は、「幸福度評価」、「生活の評価」、「領域(分野)の評価」の3層構造になっていることが分かります。

「幸福度評価」とは、住民の総合的な実感評価、つまり幸せの実感を評価するものであり、この幸福度を左右する重要な要素として、様々な「領域(分野)の評価」が存在いたします。本グループでは、具体的に(1)健康・福祉、(2)子育て・教育、(3)産業、(4)生活環境、(5)文化・生涯学習、(6)安全・安心、(7)つながりの7つの領域(分野)を幸福実感に影響を与えるものとして想定しております。

しかし人々の幸せの実感は、これら7つの領域のみによって規定されるものではなく、その他の様々な要素の影響を受けます。

特に日々の生活の中で経験する、よりパーソナルな事柄に関する実感は住民の幸福実感を考える上で重要な要素です。

そこで当調査グループでは、内閣府が実施した「国民生活選好度調査」を参考に、「生活の評価」を設定いたしました。この「生活の評価」はさらに、一人一人の暮らしぶりの実感を評価する生活実感評価と、地域の住みやすさ、愛着などを評価する地域評価に分かれます。

○調査項目
〈第1層と第2層〉
具体的な調査項目としては、まず幸福度を測るための設問が挙げられます。

次に第2層として、「生活の評価」に関する項目が挙げられます。この内、生活実感評価といたしまして、①孤立・孤独、②生きがい、③仕事、④収入、⑤住環境、⑥健康、⑦住みよさ、⑧地域への愛着(誇り)、⑨地域活動・ボランティア活動、⑩将来の不安定要素、⑪関係性(家族、近所、職場、友人)の11の要素を挙げております。また地域評価といたしまして①住み良さ、②まちへの愛着、③定住意向の3つの要素を挙げております。

「生活の評価」につきましては、各自治体によって置かれている状況が異なりますので、調査の目的に応じて、指標を取捨選択したり、評価方法を考えることが求められます。

評価方法の一例としては、満足度を求める方法や、自分の幸福度を判断する上でどれだけ重要だと考えるかを、つまり重要度を尋ねる方法、あるいは不安要素と感じているものを尋ねるといった方法が考えられます。

〈第3層〉
次に、第3層の「領域(分野)の評価」ですが、これについては健康・福祉分野を例にご説明申し上げたいと思います。

たとえば心と体の健康について「心身共に健康だと感じているか」といった主観的指標に加えまして、健康教室の参加者数や開催数、医療機関等の受診率等の客観指標を用いて補完的に問題を把握するということが重要です。

本グループでは、先に挙げました(1)健康・福祉、(2)子育て・教育、(3)産業、(4)生活環境、(5)文化・生涯学習、(6)安全・安心、(7)つながりの7つの領域ごとに、主観的指標のリストを作成し、各指標について質問文と、それらを補完するものとしての客観指標の案を作成いたしました。

○総合計画等への反映
各自治体での総合計画等では、分野別に様々な計画を立てておられると思います。
この第3層の「領域(分野)」には、総合計画等で示される分野と共通する、あるいは類似する領域が見出されます。

そのため、「領域(分野)の評価」につきましては、各計画分野に対する住民の主観的実感度を測る指標となることが期待されます。行政の基本計画に紐付けを行っていくことで、住民の幸せを基軸とした効果的な施策展開を行うことが出来るようになるでしょう。

この点につきましては、私どもも今後の非常に重要な研究課題であると考えております。

○終わりに
最後になりましたが本グループといたしましては、ハンドブックの発行がゴールではなく、これを基に、幸福度の在り方ですとか、調査項目の検討、調査結果の活用方法等について今後も議論を続けていきたいと考えております。この成果報告を基に、幸福度調査や調査結果を活用した様々な取り組みの輪が広がっていくことを希望いたしまして、発表を終わります。

実務者会議の各グループの発表内容は参加自治体の公式見解を表すものではありません。

最終更新日:平成28年2月15日